予防のための乳房切除

乳がんの予防のために、乳房を切除した米国のハリウッド女優、アンジェリーナ・ジョリさんは、乳がんがまだ発症していないときに、両側の乳房を切除しました。大きな話題になり記憶に新しいでしょう。

片側の乳房に乳がんが見つかった場合に、反対側の健側の乳房を予防のために切除することがあるのです。しかしながら、まだがんが発症していない段階で両側の乳房を切除することはほとんど日本ではありません。

もちろん、家族性の乳がん、卵巣がん家系で、乳がん遺伝子検査が陽性でもです。ある程度の客観的な判断材料も必要になりますが、将来にがんになる可能性は高いものの、ならない可能性もある場合の予防的乳房切除は決断のいることです。
Angelina Jolie had a preventative double mastectomy
乳がんは女性で最も多いがんで、2013年の推計発症患者は約7万7000人。このうち1割程度は「BRCA」という遺伝子に変異を持ち、遺伝子変異がない人に比べ、高い確率で乳がんを発症しやすいとされています。

遺伝性の乳がんの発症頻度

乳がん年推移
乳がんになっていない側の乳房を予防的に切除すると、がんの発症リスクが下がったり、生存率が上がったりすることが分かってきました。

そのため、遺伝性の乳がんについて、日本乳癌(がん)学会は5月16日、がんになっていない側の乳房をがん予防のために切除を「強く推奨する」と、診療指針を改訂されました。

ジョリーさんは、手記の中で、「BRCA1陽性の女性すべてに予防手術を勧めるわけではない」としています。乳がん遺伝子検査は、約20~25万
特定の遺伝子に異常があったら、

  • ①こまめに検査
  • ②ホルモン予防投与
  • ③乳房切除

乳房切除について

③の乳房切除ですが、具体的にはどのように手術しているのでしょうか?乳房の構造を見てみましょう。
乳房の構造における乳腺の場所
青く囲ってある場所が乳腺です。

乳がんは、乳腺組織または、乳首を含む乳管からがんが発症します。乳がんの予防手術は、この乳腺組織を取り除くことです。

なるべく目立たないようにするには、乳輪の下半周を切開します。
胸オペ(乳房摘出)の切開方法
この方法は、女性化乳房や性同一性障害の女性から男性を希望する人たち(Female to Male)がよく行う手術方法と同じです。彼らは、この乳房切除を「胸オペ」と呼んでいるそうです。

予防的に乳腺を取り出した後、希望者には豊胸シリコンバッグを入れて、ボリュームを保ちます。
乳房切除後に豊胸インプラントを入れる

乳がん未発症の乳房切除については、本人の意思によっては、「弱く推奨する」にとどまりました。

また、遺伝性乳がんの場合、乳がんを発症していない側の乳房の予防切除に対しては、「検討してもよい」としていましたが、推奨度を引き上げました。

☞乳がん遺伝子の両側乳房切除で生存率高まる

未発症の予防切除は、乳がん発症リスクを低くさせることがわかっています。現時点では、生存率が高くなるかは明確な答えがまだ出ていないため、強い推奨にはなりませんでした。

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