「梅毒」が、医学雑誌などでは最近やたらと話題になっています。梅毒というと、昔の性感染症のイメージがあります。ぼくが医学生だったころです(平成6年卒、古い(笑))。
性感染症というと、HIV、淋菌、クラミジアが有名で、梅毒というと有名な性感染症ではあるものの、感染頻度は少ない性感染症でした。しかし、必ず覚えなければいけない試験には重要な疾患でした。
感染症を専門にしている先生は他の分野に比べ見る機会は多いでしょうが、ぼくは研修医のときも含め、実際には数人しか診たことがありません。なぜ、今さら梅毒が話題になっているのでしょうか?
梅毒の2つの感染経路
梅毒はTreponema pallidumによる性感染症で,以下の2通りの感染経路があります。
・性的接触
・感染した女性の胎児に対する胎児への感染
胎児が胎盤を通して感染するリスクは、60~80%と極めて高確率です。感染した妊婦の未治療の場合には、胎児の死産や子どもの重篤な先天障害を発症したりします。成人でも長期に放置すると、大動脈瘤などの神経血管梅毒により死に至ることがあります。
わが国では,1948年から梅毒発生の報告制度がありますが,1年間に約1万1000人と報告された1967年がピークでしたが、2011年まで減少傾向でした。
ところが、2012年より上昇に転じて、ここ5年間に新規患者が毎年倍増して、2017年には5000例を突破しました。「梅毒」の初期は、自覚症状がないことも多く、潜在的な患者数はもっと多いと考えられます。
さらに気になるのは、女性患者が急増していることです。この5年間で5倍以上になっています。
最近の特徴として,ハイリスクと考えられてきた男性同性愛者に加えて,異性間交渉による若年女性の感染が増加している点にあります。
おそろしいことに梅毒感染は、一般家庭の主婦などにも広がっています。約80%が15~35歳の若い女性で占められ、特に20代前半の感染者数が突出しています。
自分だけならいいのですが、問題は感染している妊婦です。20~30歳代の女性患者は妊娠出産年齢に相当するため,胎児への感染を防ぐ上でも管理が非常に重要とされます。
梅毒は,妊婦検診の基本項目となっているのですが、無症候のまま発見されることが多く、経済的事情などで妊婦検診を受けない妊婦も少なくありません。
オーラルセックスが普及したことにより、クラミジアと同様に、梅毒も口腔を初発病巣とすることが多いことも近年の特徴です。
初期の発疹を診ることの少ない医師に対しても,梅毒を鑑別診断に入れる必要があるために、最近の医学雑誌などでよく目にする理由なのでしょう。
梅毒の症状
梅毒の初期の症状は痛みや痒みが無く、放置しても2~3週間で消えてしまいます。
感染したとしても、「何か調子悪かったけど、自然に治ってしまったな」と勘違いしたまま、または感染に気付かないまま、セックスをしてしまい、知らず知らずのうちに感染の拡大を引き起こしてしまいます。
梅毒の感染力は、HIVなど他の性病と比べ非常に強いため、1回のみのセックスで感染する可能性は、15~30%と非常に高いとされています。
また、性器の接触による性交だけでなく、オーラルセックスで咽頭部に感染し、アナルセックスで直腸に感染するなど、性行為の方法によっては、性器以外の場所にも感染します。
「梅毒」は初期段階で治療をすれば必ず完治する病気です。
不特定多数とのセックスや、セックス相手の皮膚や粘膜に異常があったなど、気になることがある人は早めに受診しましょう。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
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