自分の体質が、親と似ていることも多いかと思います。経験的には知られていますが、実際には客観的なデータは意外にも多くありません。
女性の場合、例えば、母親が胸が大きい、月経痛が重いなど、母親と体質が似ていると思うことありますよね?
実際に、女性に特異的な体質は、あるていど遺伝要素があることがわかってきています。
これらの関連性の高い遺伝要素が発見されることにより、さらに関係する病気がより明らかになれば、個々の女性に応じた治療の予防、さらには治療の対応が可能になります。
今回は、このような女性特有の体質と強い関連を示す遺伝子領域の新しい研究結果を紹介します。
人の染色体には約30億の塩基対があり、その1カ所が変化した箇所を一塩基多型(SNP)と呼びます。 11,348人の女性ボランティアの唾液から約54万のSNPを抽出し、女性に特異的な体質に関するアンケート結果と遺伝子結果を付き合わせて遺伝子解析を行いました。
胸の大きさ
強く関連するSNPが、8番染色体の遺伝子領域に存在することが明らかになりました。母親の胸が大きいと、その娘もこの遺伝子を受け継げば、大きくなることが予想されます。みんながなんとなく実感していることが、客観的に証明されたわけです。
乳がんの発症リスク
この関連する遺伝子は、すでに過去の研究で報告されています。血縁者に乳がんがいれば、その遺伝子を受け継いでいることも多いため、乳がんになる確率が高くなります。そのため、最近では、乳がんが発症する前に、乳がん遺伝子を保有している場合には、予防的に乳腺を摘出することもあります。
☞遺伝性乳がん
月経痛の重症度
過去の研究でも月経困難症における痛みの強度と関連していると報告されています。月経痛の主原因といわれるプロスタグランジンの生産を促すことが知られています。また、子宮内膜症との強い関連も示されます。
月経中の発熱
6番染色体のOPRM1と呼ばれる遺伝子領域に特徴的な遺伝子の組み合わせが存在することも明らかになりました。
この遺伝子コードは、脳内で働く神経伝達物質の1つであるβ-エンドルフィンの受容体に関係し、β-エンドルフィンは体温調節に関わることが動物実験で示されており、人での発熱にも関与している可能性があるようです。
最近では遺伝子のことが次々に明らかになっています。すべての病気が遺伝子レベルで治療できるのもそう長くないのかもしれません。
女性特有の体質と関連性が強い遺伝子や、これに関する病気がさらに明らかになることで、その個人に適した病気の予防、さらに治療の選択が明確になるかもしれません。
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Japanese GWAS identifies variants for bust-size, dysmenorrhea, and menstrual fever that are eQTLs for relevant protein-coding or long non-coding RNAs
Scientific Reports 2018; 8: 8502.