出産の方法には、通常の膣からの分娩、何らかの不都合でお腹から出産する方法を帝王切開があります。
膣からの分娩の場合、会陰切開された経験があるひとも多いかと思います。分娩時に膣と肛門の間を会陰といい、出産時に会陰部の皮膚が十分に伸びないために避けてしまうのを避けるために、最初からこの部分を赤ちゃんが出やすいように切開してしまいます。
要は、以下の損傷を避けるためと言ってもよいでしょう。
会陰裂傷(切れてしまう)には、軽度から重度な裂傷があります。
第1度 皮膚と粘膜のみ
第2度 筋肉の層まで。肛門括約筋の損傷なし。
第3度 肛門括約筋まで達するが、直腸粘膜の損傷なし。
第4度 直腸まで切れてしまう。
このように、無理をして膣から分娩してしまうと、ひどい場合は直腸まで切れてしまうことがあるのです。これらを予防するためにも最初から会陰切開をします。
ちなみに、膣裂傷というのもあり、会陰裂傷と同時に起きることが多いです。裂傷が重度だと、血の塊ができて、痛み、排尿、排便時、性交痛時に障害を起こします。
さて、この会陰切開。
実際には、陣痛の痛みの方が強くて、切られたことも覚えていない方も実際に多いです。
アドレナリンがでているからでしょう。しばらくすると、え?切ったの?と、痛みが生じてくるものですが・・・。
産科医が経膣分娩時に、会陰切開をルーチン(必ずのように)に切開することに対して、アメリカ産婦人科学会は、否定的なのです。たしかに、重度であれば障害を残すこともあるのですが、実際には軽度な裂傷なので、会陰切開をすると短期、長期的にもメリットはないため行うべきでない、と改めて指摘しています。
先ほど記載した会陰裂傷の重度ですが、実際には会陰切開をすることによって、重度な会陰裂傷、尿失禁、便失禁などを防げるという結論が得られていないのです。
むしろ、会陰切開することにより、産後の便失禁のリスクが増え、性交時の痛みを生じたりして、パートナーとの性生活に支障を来す傾向が強いとされています。
会陰切開をルーチン化している産科医は、減少傾向にあるようですが、いまだにルーチン化しているのも事実です。
そのため、必ず会陰切開を行うのでなく、それぞれの産婦の状態を考慮して会陰切開をするかどうか判断するべきとしています。
重度の裂傷を予防するために、会陰マッサージ、温湿布を貼ることが勧められています。温湿布に関しては、なにもしない場合に比べて、上記の3度、4度の会陰裂傷のリスクはかなり低くなるとのことです。
参考医学文献
Prevention and Management of Obstetric Lacerations at Vaginal Delivery.
Obstet Gynecol 2016 :128:e1-15